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東京テレビセンター 高木氏によるCS-2のレポート


株式会社東京テレビセンター 制作技術部 高木 創

<はじめに>
超指向性マイクロフォンを多数用いてサッカー場のガヤを録音する機会を得た。当初準備していた5本のMKH416Pに加えて2本のCS-2を加えての収録である(図・1)。

<図・1> スタジアムでのマイクロフォン・レイアウト

<諸元比較>
使用にあたり諸元を比較すると、以下の様に重量と感度に目立った差が認められる。
  寸法 CS-2 直径19mm、全長 250mm
    Sennheiser MKH416P 直径19mm、全長 250mm
  重量 CS-2 110g
    Sennheiser MKH416P 165g
  感度 CS-2 63mV/Pa
    Sennheiser MKH416P 25 mV/Pa
  周波数特性 CS-2 50Hz~20kHz
    Sennheiser MKH416P 40Hz~20kHz

416Pとポーラパターン比較すると、CS-2の背面感度が1kHz、2kHzで5dB程低い.他は、大きな違いは無い。
実際に手に取ると、同一寸法の416PよりもCS-2は随分軽い印象である(写真・1)。
55gの差は体感上実に大きい。参考にNeumann KMR81iとのサイズを比較する(写真・2)。

<写真・1> CS-2 & MKH416P

<写真・2> CS-2 & KMR81i

<実地使用>
レコーダーはSound Devices 788Tを使用し (写真・3)、8本のマイクロフォン(内中央2本はCS-2)をトラックに沿って配置した(図・1参照:写真・4)。 
音源は多数の観客ガヤで比較的大きな音が予想されたため、入力ゲインを低く設定した。そのときデフォルトの入力設定を416PではMic、CS-2ではLineとして、トリムでレベルの整合性を得た。CS-2の感度は非常に高い。

音質的には混合して問題が有る程極端な差は無い。感覚的印象は、ビデオα2010年5月号におけるタムコの花見氏によるレポートに共感するものであった。即ち「フラットで素直な音質」である。MKH416Pよりも音の感じは軟らかい。
その後スタジオにて整音をおこない、混合使用でも良好な結果を得る事が出来た。

<写真・3> Sound Devices 788T

<写真4> 配置されたマイクロフォン (一番手前がCS-2)

<おわりに>

MKH416Pの異常とも思える耐久性にCS-2がどこまで迫っているのか、非常に興味深いところである。特にマイク本体に結露するほどの高湿度な条件でもトラブル無く収音出来るかどうか、そのような耐久性がフィールドでは求められる。CS-2は未だその点では未知のマイクである。しかし過去にプロトタイプのWMS-5を標高4000m気温-20℃の環境で使用した際に、ケーブルの柔軟性に問題があった他には何のトラブルも無く収録した経験がある(写真・5 , 6 , 7)。

今後、CS-2の真価がどのように現れてくるのか、それが果たして416に替わり得るものなのか、興味は尽きない。

<写真・5> 
極寒多湿テント内のWMS-5

<写真・6>
 WMS-5での収録

<写真・7> 
標高4000mの火山山頂でのWMS-5